【映画感想】『イエスタデイ』音楽は権利で縛り上げるべきか、ユーモアと愛を絡めて芸術のあり方を描く

映画

『イエスタデイ』★★★★★

映画館で鑑賞。

もし世界にビートルズを知っているのが自分だけになったら。

そんなもしもボックスのような発想から生まれた映画です。

主人公ジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)は売れないミュージシャン、曲も見た目もパッとしない彼を応援してくれるのは、
幼馴染でマネージャー兼運転手をしてくれるエリー(リリー・ジェームズ)だけ。ちなみにこの子はすごく良い子です。

彼はある出来事がきっかけでビートルズが存在しない世界にジャンプ。ビートルズを知っているのは世界中でジャックだけ?という、わくわくの物語です。

最近の表現では「別の時間軸に飛んだ」ような感じですかね。

ダニー・ボイル監督らしからぬユーモア溢れる作品

監督はダニー・ボイル監督です。『トレインスポッティング』、『28日後…』、『スラムドッグ$ミリオネア』が代表作ですね。

これらの作品は、どちらかというと『イエスタデイ』のようなコメディ調ではなく、シリアスでダーティ気味の内容でしたので、今回の『イエスタデイ』の明るくユーモアのある感じは意外で新鮮でした。

『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』といったダニー・ボイル作品は、面白いは面白いのですが、正直なところ個人的にはどこか鼻につく感じしてあまり好きではありませんでした。
(どうです、この映画おしゃれでしょ?といった感じがちょっと苦手でした。ファンの方すいません。)

しかしながら今回の『イエスタデイ』はこれまでのダニー・ボイル作品の中では異色の作品となっており、非常に親しみのある映画で、個人的にはすごく楽しめました。

ちなみに私はゾンビ映画が大好きで、『28日後…』は走るゾンビ映画としてすごく好きです。
(厳密にはゾンビじゃないのですが。ややこしいので気になる方は見てみてください。)

幸せに生きることとは何か、愛に溢れた作品

つい話がそれてしまいましたが、この『イエスタデイ』は
アーティストとして大成したいという欲望に若干誘惑されながらも、ビートルズという偉大なバンドが生み出した曲を背負うという重圧につぶされそうになる主人公の葛藤と心の変化を描いた愛と笑いに溢れた作品です。

ビートルズの楽曲を携えた主人公は、ヒカルの碁の藤原佐為を連れた進藤ヒカル状態となっているため、序盤~中盤は少年漫画的な側面があり、主人公がトントン拍子で有名になっていく過程が胸熱です。

劇中でジャックはある人物に、
「自分に正直生きること」、「愛する人を大事にすること」が幸せに生きるための方法だと教えられます。
それを聞いたジャックがとった行動とは・・・
ぜひ大切な人と一緒に見て欲しい映画だと思いました。

音楽や芸術の本来の意味を考えさせられる

この映画で一番印象に残ったのは、圧倒的な芸術は世界を平和にするということです。

ジャックはビートルズの楽曲を利用して有名になりましたが、
終盤重圧に耐え切れず、大勢の観客の前で、自分生み出した音楽ではないことを発表します。

しかし、観客は誰一人、不満の声を上げる人はいませんでした。
むしろ、素晴らしい楽曲とめぐり合えたことで幸せそうにしていました。

また、別の場面では、ジャックがビートルズの楽曲を自分が作曲したように演奏していることに気づいていた人物から、
「ビートルズを世界に呼び戻してくれてありがとう。この楽曲は正しく使ってほしい。」
といった趣旨の言葉もかけられています。

これらの場面から感じることは、音楽は「誰が作曲した」とか「誰に権利がある」とかいう権利問題も作曲者を守るために重要ですが、本来それは音楽に付随するものであり、音楽の本来の性質は、「多くの人を感動させることができる芸術」だということです。

『イエスタデイ』の敏腕マネージャーは、劇中では欲にまみれた
醜い存在のように表現されてはいましたが、失われたビートルズの音楽を再度世界に広め、多くの人を感動させたという意味では、世界にとって素晴らしい役割を担ったということになります。

つまりは現代のどこぞの音楽権利団体も、音楽が持つ権利や利益という側面だけでなく、文化的芸術の側面も理解する必要があるのではないかと感じさせられます。

素晴らしい文化的芸術は世界を平和にするのですから、より多くの人に知ってもらう方が良い。

より多くの人に知ってもらうことが作者や作品の本望であるとすれば、芸術を権利で縛り上げるようなやり方は、人々の幸せを奪うこと、ひいては文化の衰退に繋がるのではないでしょうか。

とりあえずビートルズの影響力ってすごい

最後に余談ですが、ビートルズ存在しなくなると『イエスタデイ』の中ではオアシスが消えました。

まあ、オアシスが消えるのは何となく分かるのですが、コカコーラやハリーポッターまで消えたのには少しフフッとなりました。ビートルズの影響力ってすごいんですね。

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